在宅でお仕事。
後編:「うまい話にご用心!」
90年代以降、技術の向上と安価なPCがインターネットの普及を手助けし、
パソコンは家電として一般家庭に深く浸透しつつある。
そのパソコンを使って自宅で副収入を……と考えるまでは良いのだが、
裏側で大きく危険が口を開けているケースも増えている。
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★心ひかれる「手軽に収入を」の文字……★
 低迷を続けている日本経済。いくら底を打ったとはいえ、まだまだ以前のような景気には戻らない。それならばサイドワークをしてみようと考える人々が増えている。新聞に折り込まれてくる求人広告にも、自宅のパソコンを使ってアルバイトを、というものを多く目にするようになってきた。
 インターネットの普及に伴い、パソコンが「家電」になってきたのはここ数年。パソコンの登場時と比べて操作も格段とやさしくなってきたし、専門的な知識がなくてもワープロなどのアプリケーションはある程度使える、という人々が増えた。簡単な文書なら作ることができるから1日2〜3時間ぐらい文書作成のアルバイトをしても……と副収入を夢見る人もいるし、小さな子供を抱えているのでパートになかなか出られない、でも家ででき、自分のペースで仕事ができる文書作成なら……と思う母親も増えている。
 しかし、そんな人たちをターゲットとして、詐欺まがいの商法を展開する業者が出没しているのも事実だ。
 また、電子メールの爆発的普及により、サイドワークへの誘いのメールが送られてくる。内容はさまざまだが、たいてい「自宅で副収入を」「空き時間を有効に活用」「月収**万円以上可能!」と美味しいことばかりが書き連ねられている。
 自宅に居ながらにして仕事ができる・空き時間で小遣い銭程度を稼げる。この不況時、「家計の足しになるならば」とついつい裏側を見きわめることをせず、それらの話に飛びついてしまうのも無理はない。
 ただし、話に飛びつく前にその仕事の仕組みを考えてみてほしい。本当にそんな都合の良い仕事があるのか。労力のわりに高収入をうたった宣伝文句ならば、疑ってかかった方が身のためであるし、世の中の仕組みを知る良い機会だろう。
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★業者から薦められた機材を購入。でもそれは……
 家で新聞を読まない人にはピンと来ないかもしれないが、日曜日の宅配の新聞には求人広告が折り込まれる。アルバイト雑誌に比べて対象年齢層がやや上だし、各地域ごとに合った求人を出しているので、家庭にいる人(特に主婦)が多く目にする。その中で、最近目に付き始めたのが「SOHO」「在宅ワーク」の文字だ。
 これらの求人は、その会社に登録して発生する業務を請け負うものが主だ。レセプト・会社の文書などの入力、医療事務……具体的な単価を書いている求人広告もある。たいていは資料を請求し、登録するということになる。
 しかし、仕事を始める前に講習を受けなければならない場合もあるし、練習用として適当な文書を入力するノルマを課せられる場合もある。中には、現在使っている機材では古いから……と新たにパソコンやソフトの購入を勧める業者もいる。このとき高額な機材・教材を買わせてしまう悪徳商法が急増し、消費者センターへの苦情が年々増えている。
 よく考えてみればこれは怪しい!と分かるのだろうが、取り寄せた資料を読んでいくうちに登録したくなったり、合わせて直接業者から勧誘の電話がかかってくる。この購入させるまでのトークがまた実に巧妙なのだ。「一日にこれだけ文書が作れるようになります。ページ単価はこのぐらいだから、日にこれだけ作業すれば収入はこれくらい……」とセールストークで具体的な数字を出してくる。その上で、「これだけできるなら、機材分の収入はすぐです。自己投資と思って……」「それだけ勉強すれば、続けて仕事ができますから」と、機械の高額さを感じさせないようなセリフを連発するのだ。それを聞いているうちに、機材や教材を購入しただけですぐに仕事ができるような気になってくる。気づけば購入の契約書や申込書に判を押している。
 ここで購入したものが本当に役立てば、たしかに投資になるのだろう。しかし「機材は型が古かったり故障が多くて使えないものだった」「市販のワープロ教本と変わりない教材だった」という実話もある。その業者にとって折込広告に出している求人はあくまでも機材や教材を買わせる手段にしか過ぎないケースもあるのだ。
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★「美味しい」話こそ冷静な判断が必要
「仕事をさせてあげるから」と明らかに詐欺を狙った巧妙な勧誘電話もある。
 在宅で仕事をしているので、日中よくその類の電話を受ける。「これこれこういう仕事があるんですよ」「どうすれば仕事をもらえるんですか」「そのためにはこの講座に出て下さい。受講料**円です」という講座勧誘。まぁ、このように前もって講座料を示してくれるところはまだいい方かもしれない。「一度お話を聞きに来て下さい」との言葉に行ったが最後、気がつけば機材一式を買わされているとの「催眠販売」もある。最近は話を聞くだけ時間のムダだからつきあわないが、以前はよく「どういう仕事なんですか? 単価は?」「スキルは関係ないんですか?」「雇用形態は?」と多少意地悪な質問で相手を困らせていた。しかしそれは私が今こういう仕事をしているからであって、本当に仕事が欲しい子持ちの主婦だったらとびついてしまうほど美味しい話に聞こえるのだ。
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★何のための登録料?
 一度登録すれば、作業する時間・日程などに合わせたお仕事を手配します、と求人するところもある。この登録制というのは難しいもので、登録料を取るところもあれば、そうでない場合もある。どちらが良く、どちらが悪いのか判断がつきかねるが、えてしてトラブルが多発しているのが登録料を取るところである。
 1万円以上の登録料を払ったのに仕事を手配してもらえない、仕事をもらっても最初に言っていた金額とほど遠い安い値段でしか作業ができない……この手の被害は消費者センターなどに多く寄せられているし、また、作業しても支払がない・会社自体が倒産したなどのトラブルも少なくはない。
 誤解してほしくないのは、登録料を取るところがすべてこういう悪質な業者だけではない、ということだ。仕事を始める前にどの程度の実力があるのかスキルチェックをする場合もあり、その実費程度の金額を登録料とするところもある。これはスキルチェックのため費やす時間がバカにならないためであり、冷やかし目的の登録を防ぐ意味もあるらしい。
 また、「組合」のようなワーキンググループでは、組合の活動費として年額1万円弱の会費を納める場合もある。仕事をもらうためのPRや機関誌発行に使われるのだが、この場合はある程度のスキルを持った経験者が登録するような団体である。先述の登録料とはまた違った意味を持つものだろう。
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★仕事をもらえてもご用心!
 困ったことに発注する側にも悪意を持った業者がいるのも事実だ。トライアルと称して本来の仕事をタダで入力させてしまう者もいるし、一度納品したものを「ミスが多かったから」とペナルティを課してタダ同然にしてしまうところもある。もちろん、そこまで悪質なのはホンの一部でしかないが、インターネットの普及が悪徳業者増加に輪をかけたのは否めない。
 いずれにせよ、旨い話を聞いてすぐ登録や契約をするよりも、一定の期間(最低でも1日)をおいて判断するべきであり、用心するに越したことはない。「今登録しないと定員いっぱいになってしまう」「限定**名限りだから」と先方が焦らせるようであれば余計である。できる限り経験者に話を聞くのが一番だが、それも適わなければ判断ができる人に「こういう仕事があるっていうんだけど……」と話をしてみよう。第三者の判断でうまい話かそうでないかを見きわめてもらうのが最善の策だ。
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